ファクターX
ファクターXとは
グリーンプロダクツの指標「ファクターX」
お客様視点での「新たなくらし価値」の創造を追求するなかで、 製品のライフサイクルを通して「生活の質の向上」と「環境への影響の低減」の両立をめざしていますが、これを実現する製品である「グリーンプロダクツ」のものさしとして導入している評価指標が「ファクターX」です。
「ファクターX」とは、“ 環境への影響を抑制しながらどれだけ製品の価値(ライフサイクルで提供する機能)を向上させたか” を数値化して示す「環境効率」を用い、新旧両製品の「環境効率」を比較してその改善度を倍数で示した指標です。したがって、その数値が大きいほど比較した製品に対する改善度合いが大きい製品になります。
パナソニックグループではこの「ファクターX」を製品の温室効果ガスの排出削減、資源の有効活用という2つの環境側面に適用し、それぞれ「温暖化防止効率」「資源効率」を下図のように定義しています。そして、これら2つの「環境効率」の改善度合いを示す「ファクターX」を簡単な数値で表すことにより製品開発の評価や目標として活用しています。
環境効率」に関する定義、方針
「環境効率」の分子:「製品がライフサイクルで提供する機能」
製品の価値を“ 消費者が得る便益(の総量)” であると考えて独自に定量化したものです。ただし、分析が必要以上に複雑化するのを避け計算過程の透明性を保つため、製品個体差、使用環境、使用状況等の違いを考慮することはせず、製品が規格や業界などで定められた標準値で一般的に使用された場合の値を用いて「製品機能(主要機能の性能)」と「製品寿命」の積として求めるようにしています。
「環境効率」の分母:「製品のライフサイクルでの環境影響」
“ その便益の代償として地球環境に与える負荷(の総量)” に相当します。こちらはライフサイクルアセスメント(LCA)として世界的に研究が進められているので、可能な限り最新の研究成果を取り入れつつ算出するように努めています。
「温暖化防止効率」と「資源効率」
「グリーンプロダクツ認定基準」の一つとして運用しています。具体的には、地球温暖化防止では「環境効率」の分母が「ライフサイクルでの温室効果ガス排出量」で、資源の有効利用では「ライフサイクルでの新規投入資源と廃棄資源(循環しない資源の和)」で評価しています。詳細は他の項目で述べますが、この2種類の分母の有する意味合いや性状、属性は全く異なるものと認識しています。したがって、これら2つの指標を数学的に統合化することはせず、個別に扱うようにしています。
"化学物質の汚染リスクの極小化"について
この重要な環境側面については、その本来の性質や使用廃止・制限といった施策の方向性との整合性から、地球温暖化防止や資源の有効利用とともに指標化はせず、YES/NOでの評価を実施しています。
各「ファクターX」の考え方
温暖化防止ファクター
パナソニックグループでは、環境配慮製品(グリーンプロダクツ)の認定基準の一つに「温暖化防止効率」およびその向上倍率である「温暖化防止ファクター」を下図のように定義して用いています。
「環境効率」の分母は「ライフサイクルでの温室効果ガス排出量」ですが、分子は「製品機能(主要機能の性能、定格値等で示す)」と「製品寿命(標準使用期間や回数等で示す)」の乗算です。これは、“ その製品の(使用者にとっての)生涯から得られる最大の仕事量(使用者が得る便益の合算量の最大期待値)” を推量していることになります。したがって「温暖化防止効率」は“ 単位温室効果ガス排出量あたりの最大仕事量の生涯平均値” を示しています。
「温暖化防止ファクター」は「温室効果ガス排出量」に関するLCA結果を対象製品のスペックの比率に基づいて比較分析しているのと同等です。言い換えれば、ある製品における限定条件の下でCO2等の排出量をそのガスの種類に応じて地球温暖化係数により重み付けをして足し込んでいます。したがって、排出量はシンプルで上限のない無限の軸において開放的に評価されており、科学的考察に基づく排出係数の精度が高ければ信頼性の高い評価結果が得られると考えられます。
これは「温暖化防止効率」もしくは「温暖化防止ファクター」が発展性のある指標であるという特徴を示すものであり、パナソニックでは「家まるごとファクター」として複数の製品を総合して評価する指標へ展開しています。また、さらに広範囲の環境性能を把握するために活用できるのではないか、とも考えています。
資源ファクター
“ 資源の有効利用” に関する評価については、“ 温室効果ガスの排出削減” の評価とは異なるアプローチが求められると考えています。「資源ファクター」に関する「環境効率」は「資源効率」と呼んでいますが、下図に示すように、その分母には材料ごとに「ライフサイクルでの新規投入資源量(=投入資源の質量−再生資源の質量)+同廃棄資源量(=投入資源の質量−再生可能な資源の質量)」を計算し、全材料分を合計した総量を採用しています。しかしこの計算では、製品の製造と廃棄の際の材料の扱いを独立に考慮した上で合算するダブルカウントになっており現実の物質量に対応しません。現在は他に有効な指標が見当たらないため、現時点での最適解を与え得るものとして採用しています。
資源は有限ですから、各物質は、それぞれ異なる埋蔵量と消費量、再生量に基づく枯渇へのカウントダウンの個別線上にあります。資源を質量のみで評価する妥当性は低く、材料ごとに希少性や有用性、利用する品質に応じたエネルギー消費量等を勘案した「資源係数」といった重み付けを行った上で総合評価すべき性質のものであると考えていますが、まだ世界的にコンセンサスのとれたこの種の係数が存在しないと言わざるを得ない状況です。したがって、現在はこの「資源係数」はすべて1に設定して評価しています。
また、資源の再生・廃棄時には製品として一定期間使用された影響が残るはずであり、理想的には時間の関数として表現されるべき評価因子であるとも考えられます。例えば材料のクリープ現象のように、時間と環境(温度等)による連続的な関数が存在すれば理解しやすいのでしょうが、ここでは離散的あるいは選択的な数値適用に留まる可能性が高いのも事実です。しかもこの数値は材料ごとに異なり、場合によっては評価時点の市場の状況や経済的な要因が科学的知見より大きく影響する場合も想定されます。したがって"資源の有効利用"に関する指標は今後も引き続き研究が必要と考えています。
特定化学物質の取扱い
“ 化学物質の汚染リスクの極小化” を追求する中での“ 特定化学物質の削減” という目標に対しては、「環境効率」および「ファクターX」による評価や活動推進は適していないと考えています。リスクマネジメントにおいては各化学物質固有の特性、主にその毒性と曝露量との積により管理しますが、内部管理はともかく製品として消費者に提供する際には、どのような環境や状況において使用されるかを予め想定するような目標設定は避けるべきだと考えているからです。
人体や環境等に深刻な影響を及ぼす危険性のある物質は全く使用しないか、品質保証上の理由等で使用せざるを得ない製品については徹底的に保護策を施して危険の回避に最大限努めるべく、グリーンプロダクツを推進するための重要な観点の一つに特定化学物質対策を設定しています。ただし、管理の方法として「環境効率」や「ファクターX」のような相対的・段階的評価は適していないと考えています。
したがって、パナソニックでは現在は全廃・不使用を追求し、最悪でも徹底した保護管理によるリスクの最小化を達成する必要があるとの判断から、特定化学物質の削減については「温暖化防止ファクター」や「資源ファクター」とは異なる扱いをしています。
「環境効率」の分子と分母が持つ意味
製品から消費者が得る便益はその使用時に限られるのに対し、環境への影響は生産(素材の製造等含む)から廃棄に到る様々なライフサイクルの段階でそれぞれ生じます。すなわち、この便益と影響(の各総量)の比(これを「環境効率」と定義しているわけです)を最大化することが環境配慮設計の目的であり、製品単位では「ファクターX」の最大化と同じ意味になります。
便益(の総量)を推量するにあたっては、製品が提供する機能によって様々なとらえ方が可能ですが、その製品の特徴を最も端的に示しかつ家庭等で標準的に使用される場合に発現される主要な性能を「製品機能」、その機能が効能を発揮しうる期間を「製品寿命」とそれぞれ定義して、この「製品寿命」において継続的にかつ平均して享受できる量として単純化して設定すると便利です。
使用時の実際の便益は稼働率や負荷率、あるいは周囲の環境等によって異なるわけですが、ここでは標準的な使用状態を前提として推定します。この結果、初めて「製品機能」と「製品寿命」の乗算が具体的な意味を持つことになります。
この分子を複合化(すなわち複数の機能を一度に評価)しようとするならば、その数値の持つ意味が変化してしまうことを容認しなくてはなりません。
一方、環境への影響の総量は「温暖化防止効率」であれば「ライフサイクルでの温室効果ガス排出量」になります。この場合、使用時の実際の排出量は使用状況等によって変化するわけですが、分子である便益(の総量)と同様に標準的な使用状態を前提として算出することにしています。
これらのことを模式的に示したのが上図です。便益(の総量)がライフサイクルを通して得られる機能(の総量)を意味する場合にのみ、排出量の総量も分母としての数学的な意味を有することになります。図中で分母が面積で示されるのであれば分子も面積で示されるべきであろうということです。なぜなら、分子と分母の相関が強くなるほど環境配慮設計への要求が明確になるからです。製品の寿命が延びれば便益(の総量)が大きくなるが、その一方で環境影響(の総量)も大きくなるからこそ分数化(すなわち「環境効率」)して評価する意味があると考えています。
なお、上図に示すように、数学的に可能な変換として分子と分母をともに「製品寿命」で除すことによって、分子を「製品機能」単独にし、分母を「温暖化防止効率」であれば“ 単位寿命(1年、1回、等)あたりの温室効果ガス排出量” 、「資源効率」であれば簡略化した表現ですが“ 単位寿命あたりの循環しない資源の総量” と考える方法もあります。この場合は、環境影響(の総量)をライフサイクル全体で評価するために生ずる“ 製品寿命を延ばした結果(使用期間が長くなるために)その製品の一生における環境影響の総量が増加してしまう” という外面的な矛盾を防ぐことが可能になります。
「ファクターX」を「環境効率」の向上倍率ととらえるのではなく、「環境効率」の分子同士および分母同士のそれぞれの向上倍率で評価した結果の分数として表現する場合には、“ 製品機能の改善” と“ 環境影響の低減” を分離して示し、進化を直接的に訴えることができるので有効な手法と言えると考えています。
パナソニックでは、製品の「環境効率」としての意味を追求する場合には“ 便益の総量(分子)” と“ 環境影響の総量(分母)” とを比較して評価しますが、製品の機能と環境影響とを個別に追求する場合には分子分母をともに「製品寿命」で除し、“ 製品機能の改善” と“ 環境影響の低減” を分離して提示するようにしています。もちろん最終的に「ファクターX」を算出する上では両者の間に差は生じません。

