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第5話 健康志向を背景に、祈、ブーム再燃

西洋の食卓に根づいた、日本の技。〜ホームベーカリー〜
TOP家庭で「焼きたてパン」を・・・夢のはじまりマシンにパン職人の「手」と「技」を!?感動の国内デビュー、そして世界の食卓へローカルテストキッチン、大奮戦健康志向を背景に、祈、ブーム再燃
第5話 健康志向を背景に、祈、ブーム再燃

 
天然酵母パン、職人技の真髄
中さんの熱意をそっくり引き継ぎ、ホームベーカリーをさらに進化させ続けている女性の存在を聞きつけ、私は神戸市にある研究所を訪れた。前回の最後に触れた「天然酵母パンコース」が生まれた場所だ。
 
ところで、なぜ天然酵母を使ったパンが「スゴイ」のか。ここで簡単に説明しておこう。いわゆる普通のパンには、「イースト菌」が使われている。発酵力が強くパンづくりに適しており、他の微生物が繁殖しないよう純粋培養された菌だ。一方、天然酵母は、ぶどうや穀物などに付着した野生の酵母菌のことを指す。酵母菌以外の雑菌も含まれたまま培養されているため、それらが混じって、パンに酸味や旨味などの独特な味わいを加えることになるのだ。しかし、この天然酵母は、種おこしとその保存に大変な手間がかかるため、普通の人がいきなり扱えるシロモノではないとされている。フランスでは天然酵母の種を代々受け継ぎ、その店でしか焼けないパンを売る店がある。また、アメリカでは、天然酵母パンのことを「アルチザン(職人)パン」と呼ぶくらいだ。日本でもそのヘルシーさ、味わい深さが人気となり、扱うパン屋さんも見かけるようになってきた。だが、自宅で天然酵母を育てながらパンづくりをしている・・・という人はあまり聞かないのが現状だ。さて、これからお会いするスタッフは、一体どんな方法で「天然酵母パンコース」を実現したのだろう?
 
文/カワハラトモコ
文/カワハラトモコ
大のパン好きライター。
イギリス留学時代の習慣が抜けず、今も毎朝トーストとマーマレードが欠かせない。
後片付けがラクなのも、その理由!?

 
現 くらし環境開発センター生活科学グループ 主任技師 田中郁子氏
田中郁子氏
現 くらし環境開発センター
生活科学グループ 主任技師
同志社女子大学家政学部卒業、同大学院修士号取得。
入社以来、一貫して調理ソフトの開発に携わる。
「調理科学をずっと追及してきた私には、調理家電の開発は天職かもしれませんね」

 
「ホームベーカリーのお客様には、健康志向の方が多いんです。その方々からの『自宅で天然酵母パンを焼きたい!』といった熱心なリクエストを受けて、このコースの開発が始まりました。私も、この仕事に就く前からパンが大好きでしたから、ぜひ挑戦してみたい!と思ったのを覚えています」
 
と、にこやかに話してくださるのは、エンジニアの堀川友香さん。1995年からホームベーカリーのソフト開発を担当している。田中さんから直々に官能評価のノウハウを伝授された、まさに松下のモノづくりDNAを継承するスタッフだ。さらにハード開発担当の大下孝博さんも登場。彼は田中さんの時代から、16年間ホームベーカリーのメカに改良を重ねてきたベテラン技師。この2人がメインになって、海外向けのグルテンフリーパンコースやレーズン&ナッツ・ディスペンサーも開発されたのだ。ともかく、私が一番気になる「天然酵母パンコース」のことから伺ってみることにした。
現 松下ソリューションテクノロジー株式会社テクノサポートビジネスユニットエンジニア 堀川友香氏
堀川友香氏
現 松下ソリューション
テクノロジー株式会社
テクノサポートビジネスユニットエンジニア
ホームベーカリーのソフト開発に携わって8年目。1999年に日本向けの天然酵母パンコース、2002年に海外向けのグルテンフリーパンコースを実現した。

 
ホシノ天然酵母パン種とホームベーカリー
堀川さんは語る。「まずは天然酵母自体から調べ始めたんですが、これが実に奥が深い。何種類も存在する酵母菌の中から、ホームベーカリーに合う品質の安定したものを探す必要がありました。保存が困難な生種(なまだね)を使うわけにはいきませんから、乾燥粉であること、市場に広く出回っていることも選定条件ですね。そして、最終的に選ばれたのが、“ホシノ天然酵母パン種”です」
 
ホシノ天然酵母・・・。私も聞いたことがある。東京の星野さん(すでに故人)が戦後まもなく開発を始め、30年以上かけて実現したという夢の天然酵母菌である。
 
「この商品なら、酵母菌を乾燥粉の状態で保存できますし、すでに市場に広く出回っているため、ユーザーが容易に入手できる。まさに理想的でした。早速、この酵母の特性に合わせて、ソフト開発を進めることになりました」
 
なるほど、この酵母菌が世に出ていたからこそ、ホームベーカリーを使って手軽に天然酵母パンが焼けるようになったというわけだ。欧州の天然酵母パン事情を知っている私には、夢のような話である。しかし、それ専用に最適な調理プログラムを開発したわけだから、やはり大変な苦労があったのではないだろうか?
 
「ええ、大変でしたね。もともと使われていたドライイーストと違って、天然酵母はまず『種おこし』をして、酵母を活性させてやる必要があるんです」
 
現 松下ホームアプライアンス社クッキングシステム事業部 神戸ビジネスユニット技術グループ 主任技師 大下孝博氏
大下孝博氏
現 松下ホーム
アプライアンス社
クッキングシステム事業部 神戸ビジネスユニット技術グループ 主任技師
田中さんがソフト開発していた1987年から16年にわたり、ホームベーカリーのハード開発を担当。定期的に製粉メーカーの講習会やセミナーにも出向き、ソフト面の研究にも大きく貢献している。」
種おこしとは、乾燥した状態、いわば休眠状態にある菌にぬるま湯を与え、厳重な温度管理をしながら活性を促す作業だ。全くの手作業でこれをやろうとすると、酵母の量が足らなかったり、温度が上がりすぎて菌自体が死滅してしまったりする。天然酵母パンづくりの難しさは、この温度管理にあると言ってもよい。堀川さんたちは研究を続け、ホームベーカリーの温度センサーを利用して、自動で種おこしができる方法を実現させた。
 
「1回の種おこしで数回分のパン種ができるように設定することで、毎日種おこしをする手間を省きました」
 
できたパン種と材料を一緒にセットすれば、あとは焼きあがりを待つのみ、となる。だが、その焼きあがり時間についても、何度も調整を重ねる必要があった。
 
「天然酵母は、ドライイーストと違い、発酵に時間がかかるんです。通常はセットして4時間程度で焼きあがるのですが、このコースでは7時間後に焼きあがるように設定しました。最終そう決まるまでは、何度も実験を繰り返しましたよ。10時間かけて焼いた場合はどうか、9時間半ならどうか・・・と、とにかく細かく設定を変えて、調べていったんです」
 
新しいコースの開発時には、常に手探りの状態から根気よく実験を続け、ベストの答えを見出していく。その姿勢は、第1号機開発の頃と全く変わっていない。そして1999年、待望の「天然酵母パンコース」搭載モデルが発売。確実に販売台数を伸ばしているとのことだ。では、早速このノウハウを、海外向け製品にも応用・・・というわけにはいかないのだろうか?
 
「海外でもホシノさんのような天然酵母が流通していないか、いろいろ調べているところなんですよ。グルテンフリーコースを海外向けに開発した時と同様、“品質が安定しており、市場に広く出回っているもの”であることが条件になってきますから、選定がなかなか難しいんですね・・・。でも海外のお客様にも、手軽に天然酵母パンを楽しんでもらえるように努力を続けたいですね」
 
堀川さんにインタビュー中
「天然酵母は、種おこしが難しいんです」
ここで大下さんに、ハード担当者としてのご苦労を伺った。
 
「海外向けモデルの開発には、独自の苦労がありますね。パン食の本場で受け入れられるものを作らないといけませんから、まずは現地で売られている他社製品を取り寄せて、その機構をいろいろ調べていくわけです。実際に現地の粉でパンを焼いてみて、問題点があればどこが原因なのか調べて・・・得られた成果をウチの商品開発に反映するんです。例えば、生地を練る羽根の形状ひとつとっても、ほんの数ミリの差で出来栄えが変わってきますからね。それらを調べ抜いた結果、どこにも負けないウチだけの機構設計が出来あがるのです」
 
一つの商品を作り上げていく、その過程の苦労と努力を惜しまない姿勢。それはソフト開発にかかわる人も、ハード開発にかかわる人も、まるで変わらない。
 
「松下のホームベーカリーには、『おいしい』パンが焼けること、という大目標があります。だから、ハード担当といっても、耐久性やコストのことだけを考えていればよいわけではありません。ソフト担当者と一緒に、試作機で焼いたパンを食べ、その味が教えてくれることを再度設計にフィードバックする。その姿勢が不可欠です。そういう意味では、これは他の家電と比べ、ソフトとハードの垣根が低い商品かもしれませんね。お互いがお互いの領分まで入り込んで意見を述べ合う、その連携プレイこそ重要なんです」
レーズン&ナッツ・ディスペンサーの開発について語る大下さん
海外向けのレーズン&ナッツ・ディスペンサーの開発について語る大下さん。「このケースも、満足のいく形、素材になるまで、試作を重ねました」

 
パンづくりのプロ根性、中華の国で育つ
「連携プレイと言えば、彼らの働きもたいしたものですよ」
 
と、大下さん。松下ホームベーカリーの歴史に、近年大きな動きがあった。2001年からの中国生産開始だ。商品の品質最優先と共に、コストを抑えることもメーカーの使命の一つ。次にお会いした中廣権介さんはその使命に基づき、中国での工場立ち上げに大きく関わった人である。
 
「中国での工場立ち上げにあたって、現地のスタッフ、それも大学を卒業したばかりの若い人たちを集めました。私たちの製造ノウハウを素直に吸収してもらいたかったんです。でも、最初は苦労の連続でした」
 
中国出張が決まった当時、中廣さんは中国語をほとんど話せなかった。
 
現 松下ホームアプライアンス社クッキングシステム事業部 神戸ビジネスユニット 品質グループ 製品品質チーム 主任 中廣権介氏
中廣権介氏
現 松下ホーム
アプライアンス社
クッキングシステム事業部 神戸ビジネスユニット 品質グループ 製品品質チーム 主任
ホームベーカリー中国工場の立役者。立ち上げ当初、筆談とジェスチャーに頼っていた中国語も、今では現地スタッフと冗談を言い合えるほどに上達したとか。
「組み立て、検品・・・彼らに教えたいことは山ほどある。でも、筆談や通訳を通してでは、微妙なニュアンスが伝わらない。だから中国語は猛勉強しました」
 
そして、食文化の問題。そもそも、中国のスタッフには、“パン”を食べる習慣があまりない。
 
「現地には饅頭や餃子のお店はあっても、ベーカリーはありません。そんな彼らが、パン食文化のお客様の眼鏡にかなうホームベーカリーを作ろうというのですから、これは一筋縄ではいきません。何度も試作のパンを焼いて、彼らに合格点の味というものを覚えてもらうようにしました」
 
中廣さんによると、試作パンができあがる度に、スタッフ達は競うようにして食べていたそうである。日本の技術によって完成された、焼きたてのパンの味。未知のものとはいえ、彼らもそのおいしさに感動したことだろう。
 
「また、品質チェック項目の徹底も難問でした。1台のホームベーカリーが工場のラインで組み立てられて完成するまでの品質評価ポイントは、約600項目。その一つひとつについて、どこまでが合格ラインなのか、すべてのスタッフに教え込む必要がありました。」
 
中廣さんにインタビュー中
「中国のスタッフも仕事を覚えようと必死。だからこちらも熱意で応えたくて」
スタッフは約40名。彼らに松下の厳しい品質評価レベルを達成させるのは大変だったという。
 
「高品質を目指す・・・といっても、最初、彼らにはピンとこないようでした。何しろ、日常生活で手にするモノの中には、ビックリするようなものもあるわけです。例えば、現地のペットボトルなどは、ちょっと力を加えただけでフタそのものが砕けてしまうんですよ。日本ではそんなことありえませんよね。でも彼らはそんな環境で育ってきたわけですから、日本のレベルの高さには圧倒されていたようですね」
 
ラインが設置され、日本の倍、時間をかけて100台の試作品が組み立てられた。そしてそれらを日本に送って、細部までチェックしてもらう・・・その作業が何度も何度も繰り返された。中廣さんとスタッフの血のにじむような努力は約半年間(試作期間)続いたという。そしてついに、念願の量産体制が実現したのである。
 
中国のスタッフ
スタッフの多くは女性。1つのラインで1日約900台のホームベーカリーを生産する。
「驚いたのは、若い現地スタッフたちの素質。彼らは本当に一生懸命で、仕事が速い。失敗してもくじけず努力し続ける根性もある。ホームベーカリーのパンの味を知らなかった彼らが、今では誇りを持って働いている姿を見るにつけ、トライしてよかったな、と思います」
 
彼らは、今では中廣さんが見落としてしまうような小さなキズも見逃さないほどに成長した。
 
「これもひとえに、ホームベーカリーという技術的にも文化的にもレベルの高い商品あっての事ですよね」
 
確かに、自分たちの手掛けた商品で、おいしいパンが焼きあがって、食べた人が笑顔になってくれるならこんなに嬉しいことはないだろう。しかも、その商品が世界中の食卓で活躍している、と考えれば、自然と顔もほころぶというものだ。中廣さんに見せてもらった現地スタッフの写真を見ながら、私もつい自分のことのように微笑んでしまった。
中国のスタッフ
中国のスタッフから寄せられたメッセージ。「安心、安全、快適で夢と感動を与えるホームベーカリーを、世界へ向けて元気に発信していきます」

 
焼きたてパンの試食に挑戦!
さて、ここで堀川さんが声をかけてくれた。
 
「今から、試作パンの官能評価を行いますよ。一緒に食べてみませんか?」
 
いよいよパンの試食だ。彼女と共に、別棟の実験室へと向かう。ドアを開けた瞬間、こうばしい香りが・・・!この香りだけで私はかなり幸せになれる。実験室には、堀川さんの後輩で、入社して2年目の金澤さんも待機していた。そしてテーブルの上には、おいしそうなソフト食パン、フランスパン、レーズンパンが並んでいる。
 
「よく、焼きたてを食べるの?と聞かれますが、焼きあがってすぐは、焼き色や重さ、外観をチェックするだけ。味については、丸1日たったもので評価しているんですよ」
 
焼きたてのパンは基本的にどれもおいしく感じてしまうので、微妙な差がわかりにくいそうだ。1日おくことで、いいパンとそうでないものとの差が明確になるらしい。ではトーストして食べてみることは?
 
「基本的には生のままで評価します。トーストするとサクサクしてしまって、生地の状態がわかりにくくなりますから。でも、実際にお客様が食べる時の感じを調べるために、定期的にチェックするようにはしています。新製品の開発中は、毎日試作機で焼いては試食します。おかげで、パンを切るのが得意になっちゃいました」
 
試作のパン
パンにはマジックでサイズなどを書き込む。実験用なので、全部は食べないそうだ。
と、堀川さんが慣れた手つきでスライスしてくれたのは、ソフト食パン。確かに、彼女の切り方には迷いがない。パンをスマートに切るのは意外と難しいのだ。いざ試食と言っても、いきなりかぶりつくわけではない。まずはスライスした1枚を手に取り、その断面を見ながら、キメや気泡膜の具合、クラストと呼ばれる外皮の状態を細かくチェックする。
 
「ほら、ここは少し白っぽい。それからこのへんは、キメが細かいですよね」
 
堀川さんに教えてもらっても、あまりピンとこない。よくよく考えてみたら、切ったパンの表面をじいっと眺める・・・なんてことは、今までやったことがないのだ。一方、それを毎日こなしている堀川さんたちは、スラスラと評価シートに結果を書き込んでいく。
 
「今ではパンの外観を見て、手のひらに乗せるだけで、中の状態がどんな感じに仕上がっているかまで、だいたいわかります」
 
と、金澤さん。中身を見る前に出来栄えがわかるなんて、それこそ職人技だ。
 
試作パンをチェック中
試作パンをチェック中
試食に立ち会う私。見よう見まねで細かくチェック中。
「では、次に試食です。パンの真ん中をくり抜いてみてください。結構難しいんですよ」
 
私は彼女たちの真似をして、生地をくり抜こうとした・・・が、どうしてもつまんだ部分を指でつぶしてしまう。堀川さんたちは、実に器用にくり抜いて、口に運んだ。そして評価表に記入。この評価表には、実にさまざまな項目が並ぶ。例えば「硬さ」、「ざらざら感」、「噛みごたえ」などなど。しかし、私にはそういった微妙なことがわからない。「おいしい」が一番にくるのは確かだ。だが、それより詳しく感想を、と問われても、「もちもちして、ちょっと甘い・・・?」と感じる程度だ。そんな調子で、フランスパン、レーズンパンも漫然と食べてしまった。私は今日初めての体験だからワクワクしていられるが、これを毎日続けている堀川さん達はどうなのだろうか。
 
「パンを毎日食べられる、ということで羨ましがるパン好きの友人もいますが、結構プレッシャーも大きいんですよ。ここで私たちが出した結果が、設計や工場のラインにまで反映されるわけですからね。田中さんから教わったノウハウを大切に、これからもお客様の求められる美味しさを追求していきたいですね。悩みといえば・・・舌だけでなく目まで肥えてしまったことでしょうか。休日にレストランで食事しても、出てくるパンをつい手に取って、しげしげと眺めちゃうんですよねぇ(笑)」
試作パンをチェック中
「毎日同じ部分を食べて比較しています」

 
 
 
 
試作のレーズンパン
試作のレーズンパン。均等に散らばっているレーズンを見て、堀川さんも「これなら合格レベルですね」

 

 
 
と、そのとき、金澤さんのタイマーが鳴った。
 
「・・・恒温室に行かないと!」
 
と、小走りで実験室を出て行く彼女。私も後を追う。実験室から少し離れた場所に、その恒温室はあった。かつて田中さんや山中さんが、タイマーにせかされて走ったのと同様の実験施設だ。
 
「ここでは、部屋の温度を一定に保ち、試作機を使って、それぞれの温度条件によるプロセスの違いについて調べています」
 
ホームベーカリー専用の恒温室は2室ある。ちなみに、今日の設定温度は20℃とのこと。内部に設置された3台のホームベーカリーは、それぞれ室外のコンピューターで管理されている。さきほどの金澤さんのタイマーは、1台のマシンが生地の発酵を終えたことを告げるものだった。早速スケールを片手に中に入り、生地の膨らみ具合を調べる。
 
「複数の試作機で条件を変えてチェックしていますから、タイマーをいくつもぶらさげて仕事しているんです」
 
そのお話は、田中さんや山中さんからも伺ったような・・・。私は、開発スタッフの熱意と真摯な姿勢が、初代から16年を経た今も脈々と受け継がれているのを感じて、胸が熱くなった。普段、何気なく使いこなしている家電。私たちは、ボタンを押せば望んだ結果が得られる、という便利さにどっぷり漬かっている。だが、それが当たり前となっているのは、こうしたモノづくりに妥協しない人たちの努力があってこそなのだ。
プログラムの記録をコンピューターで管理
「プログラムの記録はここで管理します」

 
現 松下ホームアプライアンス社グローバル本部 海外営業グループ 欧州チーム 主事山中充子氏
山中充子氏
現 松下ホーム
アプライアンス社
グローバル本部 海外営業グループ 欧州チーム 主事
現在は欧州のセールスとマーケティングを担当。海外営業部に在籍していた頃は、海外向けホームベーカリーの開発からマーケティング、パンフレット制作にいたるまでオールマイティに活躍した。

 
ホームベーカリーのブーム再燃を願って
無事、官能評価を終えたところで、堀川さんに再度伺ってみた。
 
「やっぱり、ホームベーカリーで焼き上げたパンと、市販のとでは香りが全然違うんですよ。以前は私も気づかなかったんですが、この仕事をするようになってから、保存料などの添加物のにおいには敏感になりました。でもこうした事は、実際に使ってみた人でないとわかりにくいもの。だからこそ私自身が店頭に出向いて、実演販売できたらなあと思います」
 
堀川さんの気持ちがよくわかる。私もこの取材で様々な方からお話しを伺うにつけ、今だからこそ、もっともっと注目されていい商品だという思いを強くした。
 
たかがパン、されどパン。私が海外旅行でフランスパンの魅力にとりつかれたように、旅の楽しみのひとつとして「その地の名産を味わう」というのは欠かせない。それだけ「食」が人間の根源的な営みであり、地域に根ざした伝統文化だからでもあろう。その伝統をリスペクトしつつ、全く新しい調理器具として誕生したホームベーカリー。ここ数年、日本でも食の安全性に関わる事件が次々起こったり、スローフードの良さが再評価されたりと、人々の食への意識は変化しつつある。そんな時代だからこそ、もう一度ホームベーカリーブームが再燃したとしてもなんの不思議もないし、そう願わずにはいられない。その前に、まずは私自身が「ホームベーカリーのある幸せ」を手に入れようか、と思っている。
官能評価を終えて
今日の評価は無事終了。
「また、明日の朝焼き上がるように、タイマーセットしてから帰ります」
・・・お疲れさまです!

 

読んでくれてありがとう!
 
TOP家庭で「焼きたてパン」を・・・夢のはじまりマシンにパン職人の「手」と「技」を!?感動の国内デビュー、そして世界の食卓へローカルテストキッチン、大奮戦健康志向を背景に、祈、ブーム再燃
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