
ユニークな技術、製品を開発しているこの会社、その名は「アクティブリンク株式会社」。


実際に開発中のアシストスーツを装着させてもらい、製品や会社の描く未来像も体感させてもらったわけだが、藤本社長以下、城垣内さん、植田さんの3人がここまでの形を創っていくまでには、相当に険しい道のりを歩まねばならなかったという。大会社において社内ベンチャー支援を受けるというと、なんだかヌクヌクとした温室の中での起業をイメージしてしまう人もいるかもしれない。だが「そんなに甘いわけないですよ。みんな、社内ベンチャー制度の本当の厳しさを知らないんです」と藤本さん。
そうなのだ。支援が受けられるといっても、当たり前ではあるが、将来にしっかりとしたビジョンがあり、ビジネスとして確かな可能性が見えるものを提案しなければ、絶対にゴーサインは出してもらえないのだ。今となっては笑い話、と語る藤本さんだが、社内プレゼンにおいてはダメ出しの嵐が幾度となく吹き荒れたという。
「そうやねぇ、よく風呂の中で2人で語りあったねぇ〜」
とは、城垣内さんだ。
松下では社内ベンチャーを志す社員が、研修期間として都内で約2ヶ月間の寮生活をしながら鍛えられていくシステムになっている。偶然、同じ時期にこの研修プログラムに参加した藤本さんと城垣内さん。当時は別々の起業アイデアを胸に抱いていた彼らだったが、夜中に寮の風呂でよく会うことがあり、その度にお互いの悶々とした苦悩やなかなか見えない方向性などを打ち明け、深く語り合い、励まし合ったのだそうだ。
だが、お互いに苦悩を抱えていたこの2人の風呂場での出会いは、実は運命的なものであった…!?
ある春の日、自分のプロジェクトの構想に行き詰まり「もう、やってられへん…」というところまで追い込まれていた藤本さんのもとに、たまたま城垣内さんが現れた。もともとモータ用材料のエンジニアであった藤本さんは「モータ制御によるパワーアシスト技術開発」を狙っていたのだが、うまくいかずにもがいていた。構想自体にあきらめも感じて「ヘロヘロになっていた」(ご本人談。笑)ところだった。
そこに、城垣内さんが一筋の光を差し込んだのだ。
「なんや、そんな面白いアイデア、あきらめたらもったいないで!! モータにこだわっとらんで、空気圧縮の人工筋肉を使ったシステムを試してみるってのはどうや?きっといけるで!」
「そうか、その手があったか!!」
「パワーアシスト技術の将来性にかける!」その熱い一念が認められ、彼らはついに起業!その後、藤本さんと同期であった植田さんがテクニカルプロデューサーとして加わることになる。彼は母校である大学の研究室の扉を再び叩き、アクティブリンクの社員かつ学生という2足のわらじ状態で開発に精を出している。
「縁あってロボットの世界に足を踏み入れたわけですけど、不思議と、モータ時代に身に付けたことが役にたっていますね。人工筋肉に、ある動作を行わせるのに、どれぐらいの制御をしてやればよいか…という感覚を掴む上で、過去の経験が役立つことが多いです」
さあ、こうして生まれたアクティブリンクだけれども、彼らは前編で紹介したリハビリ用のパワーアシストスーツやパワーアシストシューズの開発以外に、娯楽用の商品展開にも取り組んでいるのだそうだ。
「例えばスポーツトレーニングの分野でスキルをアシストするような方向ですね。アシストスーツを身に付けて規定のフォームと違う動きをすると、わざと身体に負荷がかかる。すると身体も脳も正しい動きを覚えていく…というものです。ゴルフのスウィングや野球のバッティングフォームを矯正したり、プロのフォームの動きをトレースしたりできるようなアシストスーツのアイデアもあります。タイガー・ウッズのフォームを体感、なんてのも面白いかもしれない。負荷がかかる機構を利用したダイエットスーツなどへの応用も考えています」

立命館大学・理工学部との共同開発により2005年の愛・地球博に出展された「パワーエフェクター」。人の指・手・腕の力を増幅し、スチール缶を縦に潰すことができる一方で、生卵を割らずに持つような繊細な作業も可能。
う〜ん、なるほど。パワーアシストという考えで、いろんな可能性が広がっていくね。
そこで僕もちょっと考えてみたんだけど、災害救助の場で活躍するようなパワーアシストスーツがあったらどうだろう。災害や事故現場で、重機が入り込めないような狭い場所の場合、そのスーツを着用した救助隊員が入り込み、増幅されたパワーでがれきなどの障害物をどかして人を助ける、なんてイメージなんだけど。
そんなアイデアなんかも聞いていただきつつ、そろそろ取材を終えようかというときに、藤本さんが語ってくれた。
「僕たちは、人との出会いに恵まれてきたなあと思います。僕ら社員はたった3名ですが、リハビリ用のアシストスーツは兵庫県のリハビリセンターの皆さんと出会ったことがきっかけで生まれましたし、大学教授とのご縁はもちろん、学生さんも含めた研究室の方達や、他のメーカーさん、職人さんなど、プロジェクトごとに多くの人に助けられ、そこで初めて何かを生み出すに至っています。そのときそのときで、一番出会いたい人にベストタイミングで出会っているような感じで(笑)。しんどい、苦しい思いもめちゃめちゃ味わいましたけど、その経験は今、みんな役立ってますからね。
今後はアシストの世界と並行して、SF映画に出てくるような人間力増幅!!みたいなパワフル方向もやってみたいですね。あ、もちろんやるからには、事業として成り立つ形でね(笑)」
ははは、やっぱりそういう路線もありなんですね。
「僕らは、ロボット自体が自在に動く…という世界よりも、『人間が本来持っている力を支えるモノ』を作る、ということを目指したい。そしてとことんインテリジェンスでありたいですね。アイデアはいくらでもあります。これからも期待していて下さい!!」
アクティブリンクの皆さん、
どうもありがとうございました!