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ピックアップフェイス

大西崇範

2006年世界選手権の代表候補。2005年、2007年にはユニバーシアード代表に選出。
「今、自分の好きなことをしているから、幸せだ。」と、大西は言う。
マイペース。でも負けず嫌い。大西は、鍛えてきたパワーと持久力で試合に挑む。

執着なくバスケを楽しむ少年時代

大西は、浅黒く灼けた肌に白い歯をのぞかせ椅子に座った。飄々とした語り口はクールな印象さえ与えるが、インタビューが進むにつれて、大西の内に秘めた熱い想いに触れることになる。

「小学6年のとき、転任してきた先生がミニバスチームに誘ってくださって。」と、大西はバスケとの出会いを語り始める。練習場所は先生の赴任前の小学校。すでに180cm近くあった大西を、先生はみずから車で送り迎えしてくれたと言う。中学校の学区が違うため、『兵庫ナンバーワンの実力校に一緒に行こう!』とチーム仲間から誘いを受けながらも、大西は学区内の中学へ。「勝負への強いこだわりもなかったですし、むしろ友だちの輪が広がって楽しかったです。」とサラリと笑う。

中学のチーム成績は“そこそこ”だったらしいが、大西は兵庫県のジュニアオールスターに選出され、全国大会へ。ここでも気負いがなかったようで、「東京行きがうれしくて、遠足気分でした(笑)」と悪びれることなく当時を語る。中学3年で193cm。県外の強豪高校からも声がかかる中、県内の育英高校での寮生活を選ぶ。理由は、“電車に乗るのがイヤだった”からだとか。「小学生なのに、子ども料金で改札を通って呼び止められた。」という経験もあり、「車内でジロジロと見上げられるのもイヤだった。」と苦笑する。

身体を動かすことが好きでボールを追いかけていた。当時から「バスケと同じくらい釣りも好きだった。」とも明かす。“バスケで将来を”という意識もないまま進んだ兵庫育英高校で、大西の運命は変わり始める。

スタミナも、メンタル面の強さも自分のものに

「育英の監督は、何をしても叱らなかった。1年から試合に出ていたけれど、(身長があるから)センターと縛られず、外からのシュートもOK。だから、いろんな個人技を試そうと思いました。」この自由な指導が、大西の積極性を引き出し、バスケへの情熱に火を点けたようだ。

厳しい走り込みにも、手は抜かない。「サボっている人には、『試合に出れないのは自分が悪いんだ。』と感じてました。」と力を込める。「やればやるだけ力もついたし、限界まで自分を追い込めた。」と胸を張る。兵庫県大会では3年間負けなし。副キャプテンを務めた3年時には、インターハイ8強。高校代表合宿にも招集された大西は、関東の雄・日体大へ進学する。

自由な部活から、厳格な体育会へ。「よく怒られてましたよ。1年の誰かが“粗相”をしたら全員が連帯責任で丸坊主になったり。」さすがにマイペースな大西も、規律に戸惑う。「問題児だった。」と自嘲するが、コートの中では先輩に対しても真剣勝負を挑み、2年でレギュラーに定着。「周りのレベルが高かったので毎日がチャレンジ。マッチアップする相手には絶対に負けたくなかった。ディフェンスもオフェンスも、すべてにおいて。」と、負けず嫌いな一面が見え隠れする。2年生でインカレ8位。3年生で5位。最上級生となった大西は、監督からキャプテンに任命される。「正直、イヤでした。プレー以外のことに気を遣うのが大変で。」はじめはそう感じたかも知れないが、仲間への声掛けに努め、結束を固めるのに腐心した大西。「自分たちの代で前年よりいい成績を上げたい。その一心でした。」と笑う。

インカレ3位。準決勝を4点差で落とした。決勝に進めなかったその瞬間の想いを、少し照れながら「自然に涙が零れ落ちました。」と大西は明かす。長身にコンプレックスを抱いていた少年期から7年。人目もはばからずに涙を流すほどバスケに入れ込んでいる自分を、大西は発見した。

オールマイティな戦力を目指して

松下電器(現・パナソニック)から誘いがあった。「関西に戻りたいし、できれば松下で。」と考えていた大西。教員という選択肢もあるにはあったが、「できるうちはバスケットをやりたいと思った。」とキッパリ。トライアンズには、学生時代に練習参加したこともある。当時から、「個性が強く、気も強い選手が多いチームだな。」と感じていたらしい。この“猛者の集団”の中で、大西はどのようにして自分のポジションを切り拓いていくのだろうか。

「オールマイティな強さを身につけたい。対戦カードによって使い分けてもらえる、使い勝手のいい選手でありたい。シュートレンジは広いほうだし、3ポイントも撃つ。ゴール下だけでなく、速攻にも積極的に参加したい。リバウンドは、大きな選手についたらボックスアウト。自分で取れなくても、相手にも取らさない動きをする。」と分析。鍛えてきたパワーとスタミナ、そして自由な発想のシュートが大西の持ち味だ。

社会人6年目。同じ“4番タイプ”の根来選手も加入した。プレースタイルに、違いを出さなければならない。ここ最近、出場機会を増やしてきた大西だが「しっかり走って、スタメンを狙っていきます。」と貪欲に語る。2006年世界選手権では代表候補となり、2005年と2007年にはユニバーシアード代表にも選出されている大西。これからも、国際試合で活躍する姿をぜひ披露してもらいたい。

「見た目、やる気がないように思われるんですよね(笑)」と頭をかく。だが、インタビューの終盤、スタートしたばかりの結婚生活について水を向けると、「妻も実業団でバスケをしていたのに、選手を辞めた。もっと現役でやりたかったかもしれない。だから、二人ぶん頑張らなければいけない。中途半端にやるわけにはいきません。」と、力強く言い切った。

誰にも負けないモノは?との問いに、
「気持ちです」と即答した大西。
「冷静でいて、中身は燃えたぎっているのが理想だ」と。
大西がコートを駆け回るとき、チームは底知れぬパワーを秘める。